脳梗塞や脳出血による後遺症——片麻痺、言語障害、しびれ——は、発症から時間が経つにつれて「リハビリを続けても改善が頭打ち」という壁に直面することが少なくありません。従来の標準的なリハビリテーションでは、慢性期になると十分な機能回復が得られにくいという課題が医学的にも指摘されています。
近年、幹細胞を用いた再生医療が、神経修復・血管新生促進作用により、従来治療では難しかった領域に対する、新たな可能性として注目されています。
脳血管障害とは
「脳血管障害」とは、脳の血管が詰まる(脳梗塞)、あるいは破れる(脳出血やくも膜下出血)ことによって脳組織にダメージが生じる疾患の総称です。
脳梗塞と脳卒中の違い
非常にこの2つの違いを質問されますが、簡単にまとめると以下のようになります。
- 脳卒中:脳梗塞、脳出血・くも膜下出血など、脳の血流が突然途絶え、意識障害や麻痺などの症状が現れる急性の脳血管障害の総称
- 脳梗塞:特に血管が詰まることにより酸素等が届かず脳細胞が死ぬ症状、で脳卒中の中で最も多いタイプ
多くの場合「ある日突然」顔のゆがみ、言葉が出ない・理解できない、激しい頭痛や意識消失などの症状が現れ発症し、緊急治療が必要になります。
治療後も最終的に、脳の損傷部位に応じた重篤な後遺症が残る場合があります。
このような方に幹細胞治療をご提案しています
東京リライフクリニックの脳血管障害治療は、以下の既往歴に伴う後遺症でお悩みの方が、幹細胞治療を検討する対象となります。
- 脳梗塞(アテローム血栓性・心原性・ラクナ梗塞など)
- 脳出血(高血圧性脳内出血など)
- くも膜下出血
- 血管性認知症・混合型認知症
- これらの病気による後遺症でお悩みの方
- リハビリを続けているが「改善が頭打ち」と感じている
- 医療機関で「これ以上の回復は難しい」と言われた
- 標準治療に加え、新たな選択肢を積極的に検討したい
脳血管障害発症後の経過とリハビリ

早期の発見と急性期治療により、一命を取り留めたとしても、廃用症候群防止と、脳神経の可塑性を最大限に活かすため、すぐにリハビリテーションを行うことになります。
脳血管障害発症直後による、患者の回復期リハビリ(3~6ヶ月以内)は、劇的な回復を見せることがありますが※1、それ以降の慢性期に至るとリハビリを継続しても機能改善が停滞する「回復のプラトー(頭打ち)」と呼ばれる状態に達することが知られています。※2
「回復のプラトー(頭打ち)」の原因
このプラトー状態が生じる背景には、脳内環境の根本的な変化があり、複雑に作用しつつも、以下の順番で3つの阻害要因が形成されていきます。

1.損傷部位の周囲で慢性的な炎症が持続し、残存する神経細胞の正常な働きを妨げ続ける
2.この炎症に対する防御反応として、グリア細胞による瘢痕(はんこん)(かさぶたのような硬い組織)が形成されるが、慢性期になるとこれが新しい神経回路の構築を物理的に阻害してしまう
3.炎症と瘢痕による二重の阻害が続くことで、神経の成長・修復に不可欠な神経栄養因子(BDNF等)が枯渇し、可塑性が著しく低下する
さらに、麻痺した手足を十分に使えない期間が長く続くことで、筋力低下や関節拘縮といった廃用症候群も進行し、脳の回復ポテンシャルに対して身体機能の準備が追いつかなくなることも、機能改善の停滞に拍車をかけます。
後遺症の分類と幹細胞治療の可能性
プラトーが生じることにより、脳血管障害は、損傷を受けた脳の部位によって様々な後遺症が残ります。幹細胞治療とリハビリテーションの組み合わせにおいて、国内外の研究で改善報告が多く見られる代表的な後遺症を、報告頻度の高い順にご紹介します。

1. 運動機能の後遺症
手足が動かしにくい、杖や装具がないと歩きづらい、ボタンをかける・箸を使うなどの細かい動作が難しくなるなど、日常生活のあらゆる動きに支障が出ます。
2. 言語・嚥下機能の後遺症
言葉が出ない・理解できない(失語症)や、ろれつが回らないといったコミュニケーションの障害に加え、飲み込みにくさ(嚥下障害)による誤嚥のリスクが伴います。

3. 感覚の後遺症
手足の持続的なしびれや痛み、触覚の鈍さといった感覚異常のほか、部分的に視野がかけてしまう視野障害が残ることがあります。

4. 高次脳機能の後遺症
新しいことを覚えにくい記憶障害、集中が続かない注意障害、段取りを組んで計画的に行動できない遂行機能障害、片側の空間を無意識に見落とす半側空間無視などが生じます。
※医学的には失語症も高次脳機能障害に含まれますが、ここでは記憶や注意などの認知障害を中心にご説明します。
5. 情動・精神面の後遺症
脳卒中後のうつ状態による意欲低下や不安感、些細なことで涙が出るなど、感情のコントロールが難しくなる(感情失禁)ことが見られます。
脳血管障害から認知症への連鎖リスク
特に記憶障害や注意障害といった症状を持つ「高次脳機能の後遺症」は、検査をしない限り専門家でも「認知症と区別がつかない」ことが多いです。実際には脳血管障害は認知症発症の重大な引き金となることが明らかになっており、脳血管の損傷により直接「血管性認知症」を引き起こすだけでなく、それまで症状のなかったアルツハイマー型認知症の進行を促進させることが研究で報告されています。※3
幹細胞治療が脳血管障害後遺症にアプローチするメカニズム
「回復のプラトー」を引き起こす3つの要因に対して、幹細胞治療はパラクライン効果という、幹細胞が分泌する生理活性物質による作用を通じて、それぞれに直接アプローチします。
1.慢性炎症の鎮静化
幹細胞が分泌する抗炎症性サイトカインは、残存する神経細胞の働きを妨げる慢性炎症の鎮静化に関与するとされています。これにより、神経細胞が機能しやすい脳内環境の整備をサポートすると報告されています※4。
2.グリア瘢痕の軟化と血管新生
幹細胞はMMPという瘢痕を軟化させる分解酵素とVEGF(血管内皮増殖因子)を分泌するため、微小な血管ネットワークの構築プロセスを助ける可能性が研究されています※5。そして、この新しい血管をガイド役として、神経軸索の伸長がサポートされます。
3.神経栄養因子の補充
幹細胞はBDNF(脳由来神経栄養因子)をはじめとする成長因子を豊富に分泌します。それにより、枯渇していた成長因子を補うことができ、低下していた脳の可塑性を活性化し、神経回路の再構築が促進されると報告されています※6。
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報告によれば幹細胞治療と、リハビリテーションを掛け合わせることにより、相乗効果が生まれると示唆されており、どちらか単独の治療よりも治療効果は有意に改善し※7、従来の治療では限界とされていた慢性期の後遺症に対しても、新たな改善の可能性を提供できると言われています。
東京リライフクリニックで取得している治療科目
当院は再生医療等安全性確保法に基づき、以下の認可を得ています:
・計画番号 PB3240265:自己脂肪由来幹細胞を用いた脳血管障害治療

※本治療は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、厚生労働省に届出が受理された第二種再生医療等提供計画に基づく自由診療(保険適用外)です。
※本治療で使用する幹細胞は、医薬品医療機器等法(薬機法)上の承認を得たものではありません。当院が運営する細胞培養センターにて加工・培養されたご自身の細胞を使用します。
脳血管障害後遺症に対する幹細胞治療の研究報告
研究内容 | 規模 | 結論 |
|---|---|---|
脳卒中発症後慢性期の患者に対して間葉系幹細胞治療の治療を行う※8 | 18名 | 運動機能ESSスコア、神経系NIHSSスコアにおいて有意に改善 |
脳卒中後遺症の患者を対象に幹細胞治療を行う※9 | 40名 | 修正Barthel Index指標において、日常動作有意に改善 |
慢性期の脳卒中発症患者に対して幹細胞治療を行う※10 | 30名 | NIHSSスコア、mRSスコア、ESSスコアが有意に改善 |
脳梗塞後遺症が残っている患者に対して幹細胞治療を行う※11 | 48名 | NIHSSスコア、FIMスコアで有意に改善 |
※上記の研究報告は学術的な参考情報であり、当院の治療効果を保証するものではありません。効果には個人差があります。
幹細胞治療の副作用・合併症・注意事項について
治療効果には個人差があります。本治療は未承認の自由診療であり、当院運営の細胞培養センターにて加工した自己細胞を使用します。また、本治療を受けることによる危険性としては、皮下脂肪の採取や細胞の投与に伴い、合併症や副作用が発生する場合があります。代表的なものとして脂肪採取時には、出血や腫れ、アナフィラキシーなど、また投与時もアナフィラキシー、肺塞栓、吐き気などの可能性があります。
詳しくは、幹細胞治療の副作用、合併症、注意事項についてのページをご覧ください。
料金
点滴スタンダード幹細胞
プレミアム幹細胞点滴
Relife幹細胞
年間保管料
参考文献
※1 Nudo RJ, et al. J Neurosci. 1996;16(2):785-807.
※2 Kwakkel G, et al. Stroke. 2004;35(9):2181-6.
※3 Snowdon DA, et al. JAMA. 1997;277(10):813-7.
※4 Ohtaki H, et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 2008;105(38):14638-43.
※5 Abdul-Muneer PM, et al. Mol Neurobiol. 2016;53(9):6106-6123.
※6 Honmou O, et al. Brain. 2011;134(Pt 6):1790-807.
※7 Yasuhara T, et al. Stem Cell Res Ther. 2023;14(1):10.
※8 Steinberg GK, et al. Stroke. 2016;47(7):1817-24.
※9 Bhasin A:Cerebrovasc Dis Extra. 2011;1(1):93-104
※10 Chen DC:Cell Transplant. 2014;23(12):1599-1612
※11 Nguyen LT, et al. Stem Cells Transl Med. 2025;14:szaf063.
※12 Hare JM, et al. Nat Med. 2025;31(4):1257-1271.
よくある質問
- Q:脳梗塞・脳出血から何年も経過していますが、幹細胞治療は受けられますか?A:はい、受けられます。当院の幹細胞治療は、急性期治療と「回復が頭打ち(プラトー)」になった慢性期の患者さま両方とも対象です。発症から数年が経過していても、脳内の慢性炎症や神経栄養因子の枯渇といった阻害要因は継続しているため、幹細胞による脳内環境の改善で再び機能回復の可能性を引き出すことを目指します。発症時期を理由に諦めずに、まずはご相談ください。
- Q:幹細胞治療を受ければ、リハビリはしなくても良くなりますか?A:いいえ、リハビリテーションとの併用が絶対条件です。幹細胞治療の研究では、リハビリだけ、または幹細胞治療だけよりも、幹細胞治療とリハビリテーションの相乗効果が、慢性期における機能回復に最も効果的と報告されています※7。
- Q:治療効果はいつ頃から実感できますか?A:効果の現れ方には個人差があり、一概にお伝えすることは困難ですが、研究報告では、数週間から改善が始まり、6ヶ月後から有意な改善が認められます※8, 9, 10, 11。
これは神経回路の再構築には一定の時間が必要だからと考えられます。急性期治療のような「すぐに劇的な変化」ではなく、リハビリと併用しながら時間をかけて変化を見ていくタイプの治療とお考えください。
※すべての方に効果が認められるわけではありません。
- Q:どのような後遺症に対して効果が期待されていますか?A:海外・国内の研究では、片麻痺・歩行障害などの運動機能、失語症・構音障害・嚥下障害などの言語・嚥下機能、しびれ・感覚異常、注意力低下や記憶障害などの高次脳機能障害において改善傾向が報告されています※8, 9, 10, 11。幹細胞のパラクライン効果(抗炎症作用・神経栄養因子の補充・血管新生促進)は脳全体に作用するため、複数の後遺症に対して包括的なアプローチが期待されます。
※どの症状がどの程度改善するかには個人差があり、すべての方に同じ効果が得られるわけではありません。
- Q:脳血管障害による認知症にも効果がありますか?A:はい、対象となります。研究でも脳血管障害をきっかけとする「血管性認知症」や、アルツハイマー病変への幹細胞による治療が、脳内環境の改善、認知機能の維持・改善に波及する可能性を示唆しています※12。
ただし、高次脳機能・認知機能への効果は運動機能と比較して評価に時間を要するため、長期的な視点でのアプローチが重要となります。

監修医師:中尾 真紀
眼科専門医としての豊富な臨床経験に加え、再生医療および抗加齢医学の知見を融合した医療を実践。エビデンスに基づく先進医療と丁寧な対話を重視し、患者一人ひとりに寄り添った最適な医療の提供に取り組んでいる。2026年より東京リライフクリニック院長に就任。
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