ポイント
- 国立長寿医療研究センター版セルフチェックリストの正しい使い方と注意点
- このリストで「気づきやすい症状」と「見落としがちな症状」の違い
- セルフチェックの結果が気になったら、まず何をすべきか
MCIが気になったらチェック!
50代以上になると、「最近同じことを何度も聞いてしまう」「人の名前が思い出せない」などの変化が気になり始める頃です。そこから「自分がMCI(軽度認知障害)や認知症になるのではないか」と心配される方が増えてきます。自分自身や周囲の人に気になる変化がみられたとき、どうすればよいのでしょうか。その一つの方法として、まずはご自身でチェックを行い、必要に応じて医療機関へ相談するという方法があります。
国立長寿医療研究センターが作成した簡易セルフチェックリストは、多くの医療機関で活用されており、信頼性の高いチェックリストの一つといえます。まずは、チェックリストを用いて、ご自身やご家族の状態を確認してみましょう。
国立長寿医療センター版認知症チェックリスト
□ 1同じことを言ったり聞いたりする
□ 2物の名前が出てこなくなった
□ 3置き忘れやしまい忘れが目立ってきた
□ 4以前はあった関心や興味が失われた
□ 5だらしなくなった
□ 6日課をしなくなった
□ 7時間や場所の感覚が不確かになった
□ 8慣れた所で道に迷った
□ 9財布などを盗まれたという
□ 10ささいなことで怒りっぽくなった
□ 11 蛇口・ガス栓の締め忘れ、火の用心ができなくなった
□ 12複雑なテレビドラマが理解できない
□ 13夜中に急に起きだして騒いだ
※1より引用
ご自身あるいはご家族の状態を当てはめてみて、どのような結果になったでしょうか。このリストでは、「3項目以上当てはまる場合は、まず相談を」という基準が示されています。
MCIだけを計るチェックリストはまだない!?
実はMCI専用として広く普及しているチェックリストは、現時点ではあまり見当たりません。そのため、多くの場合、認知症向けのリストが代用されています。
したがって、認知症には至っていないMCIの段階では、基準に満たず、該当項目が1~2個程度にとどまる場合もあるでしょう。
しかし、そのような場合でも、不安や違和感があるなら、一度相談してみることは大切です。(因みに治験ジャパンのサイト※2では、「厚生労働省が推奨するMCI専用チェックリストはあるか?」という質問が掲載されており、「現時点で、厚生労働省や学会が一般向けに公表している"単一の公式なMCI専用チェックリスト"は存在しない」と説明されています。)
MCI専用のリストが少ない理由
- 認知症用リストと類似した項目構成になりやすいこと
- MCIは認知症より軽度であり、将来的に認知症へ進行するか判別しにくいこと
- MCIにもさまざまなタイプがあり、一つのリストで全員をカバーするのが難しい
このチェックリストで発見しやすい認知症・MCIのタイプ
認知症の中で最も多いのは アルツハイマー型認知症です。そのため、MCIでも最も多いタイプは、アルツハイマー型認知症への進行可能性が高い「記憶障害型MCI」となります。
したがって、チェックリストを作成する際には、まずアルツハイマー型の変化を拾いやすい構成になる傾向があります。
その結果、他のタイプについては、やや検出しにくくなる可能性があります。
チェックリストで見ている能力
下の表は、長寿医療研究センター版リストの内容を、筆者が分析したものです。各項目がどの認知領域(記憶、言語など)を評価しているのか、また、その認知機能を主に担う脳部位がどこかを整理しています。
長寿医療センター版チェックリスト項目 | 認知領域 | 脳部位 |
|---|---|---|
1 同じことを言ったり聞いたりする | 記憶 | 側頭葉 |
2 物の名前が出てこなくなった | 言語 | 側頭葉/前頭葉 |
3 置き忘れしまい忘れが目立ってきた | 記憶 | 側頭葉 |
4 以前はあった関心や興味が失われた | 意欲 | 前頭葉 |
5 だらしなくなった | 意欲 | 前頭葉 |
6 日課をしなくなった | 意欲/その他* | 前頭葉 |
7 時間や場所の感覚が不確かになった | 見当識(記憶) | 側頭葉 |
8 慣れた所で道に迷った | 視空間認知 | 頭頂葉 |
9 財布などを盗まれたという | 妄想 | 前頭葉 |
10 ささいなことで怒りっぽくなった | 人格 | 前頭葉 |
11 蛇口・ガス栓の締め忘れ、火の用心ができなくなった | 遂行/注意 | 前頭葉 |
12 複雑なテレビドラマが理解できない | 記憶/言語 | 側頭葉/前頭葉 |
13 夜中に急に起き出して騒いだ | 妄想 | 前頭葉 |
その他:ケースバイケースで度の認知領域が低下しているかが異なる
※1より項目引用
さらに、チェックリストの項目を「認知領域別」「脳部位別」に分類し、その比率を示したものが下の円グラフです。

アルツハイマー型認知症と前頭側頭葉変性症は発見しやすい
色分けを見ると、「青」と「赤」が多いことに気づくでしょう。左のグラフを見ると、チェック項目の約8割が『物忘れ(記憶, 36%)』『やる気(意欲, 22%)』『性格(人格・妄想, 21%)』に集中しており、これらの領域は右グラフの同じ色でそれぞれ対応しており、脳の側頭葉と前頭葉の機能に当てはまります。
これらの領域と機能を認知症やMCIのタイプと関連づけると、以下のように整理できます。
物忘れから始まる「青」タイプ
→ アルツハイマー型認知症 /記憶障害型MCI
性格や意欲から低下が始まる「赤」タイプ
→ 前頭側頭葉変性症 /非健忘・単領域型MCI
上記以外の要注意タイプ
さらに、その他のタイプについては、次のような特徴も考えられます。
言語機能低下が主体の「水色」タイプ
→ 進行性失語症 /非健忘・単領域型MCI
一方、判断が難しいのが レヴィ小体型認知症です。幻視が代表的な症状ですが、MCI段階では、他の認知機能にも軽度の低下がみられる場合があります。そのため、このリストだけで特徴を把握するのは難しいかもしれません。
チェックリストの結果が気になったら
いずれにせよ、チェックリストのみで医学的診断を行うことは困難です。実際の診断は、身体状況(血液検査、脳画像検査など)、認知機能検査、生活状況の聞き取りなどを総合的に踏まえて行われます。
それでも、チェックリストは「受診のきっかけ」として非常に有用です。そのため、多くの自治体でもチェックリストを公開し、早期発見・早期相談を促しています。今回の結果が気になった方、当てはまる項目数は少なくても『何か違う』と感じている方は、ぜひ一度、専門職によるより詳しい評価を受けてみてください。
【東京リライフクリニックからのお知らせ】
MCI(軽度認知障害)への新しいアプローチ
今回のセルフチェックで気になる項目があった方は、一人で悩まずご相談ください。当院では、言語聴覚士による専門的な評価と生活習慣の改善指導に加え、「幹細胞培養上清液・エクソソーム点鼻」「NAD+点滴」を用いた細胞環境の最適化サポートもご提案しています。「受診すべきか迷う」という段階でも、まずは現在の状態を整理することから始めませんか?
執筆・寄稿: 言語聴覚士 小山美恵
<経歴>
国立精神・神経センター武蔵病院(現国立精神・神経医療研究センター)もの忘れ外来で心理検査に従事。その後県立広島大学コミュニケーション障害学科、横浜市立脳卒中・神経脊椎センターリハビリテーション部、老健等で言語聴覚療法に関する業務を行う。
参考文献
※1 認知症チェックリスト第二版、愛知県健康福祉部高齢福祉課、2017年
※2 軽度認知障害(MCI)チェックリスト|初期症状のサインと「物忘れ」との違い・回復への対策まで解説 | 治験モニターのススメ、治験ジャパン、2025.12.19



