お知らせ
令和8年3月13日に報道されました再生医療に関する死亡事案につきまして、亡くなられた患者様のご冥福を心よりお祈り申し上げるとともに、ご遺族の皆様に深くお悔やみ申し上げます。
厚生労働省の発表によれば、東京都内の医療機関において、自家脂肪由来間葉系幹細胞を用いた再生医療を受けられた患者様が投与中に急変し、その後搬送先の医療機関において死亡が確認されたとの報告がなされております。
これを受け、厚生労働省は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」に基づき、当該医療機関が実施していた再生医療等の提供計画および関連する特定細胞加工物の製造について、一時停止を命じる緊急命令を発出したと公表しております。
本件については現在、関係当局による経緯の把握および原因の究明が進められている段階であり、死亡に至った原因については引き続き検証が行われている状況と認識しております。
当院としては、特定の医療機関や個別の症例について評価やコメントを行う立場にはありませんが、再生医療に携わる医療機関の一つとして、本件を極めて重大な事案として受け止めております。
再生医療は、細胞や組織を用いて身体機能の回復を目指す先進的な医療分野であり、大きな可能性を有しています。一方で、細胞という高度な医療材料を取り扱う医療である以上、一般医療以上に厳格な安全管理、品質管理、医学的適応判断が求められる医療でもあります。
そのため当院では、患者様に安心して治療をお受けいただくため、診療、細胞加工、品質確認、投与、アフターフォローまでを一体的な管理体制のもとで実施することが重要であると考え、以下の安全管理体制を整備しております。
当院における安全管理体制
1. 自社CPC(細胞培養加工施設)による一貫管理
当院では院内に細胞培養加工施設(CPC)を併設し、自己脂肪由来幹細胞の採取から培養、品質試験、投与に至るまでを自院で一貫して管理しております。
外部施設への培養委託や細胞輸送に依存しない体制により、
- 診療部門と培養部門の密接な連携
- 細胞の採取から培養、投与までの履歴管理(トレーサビリティ)の確保
- 品質確認と投与判断の一体的管理
を実現しています。
細胞は温度や環境変化に影響を受けやすく、輸送過程における管理は重要な安全要素となります。そのため当院では細胞加工を院内で完結させる体制を整え、採取から投与までの全工程を管理しています。
また、患者様への透明性確保の観点から、CPCの見学(窓越し)、投与時に医師による細胞状態の説明、ならびに品質保証証明書による培養細胞画像の提供を行い、細胞の培養過程および品質管理の状況を患者様にご確認いただける体制を整えております。
2. 全例での品質検査
当院では投与前に必ず品質試験を実施し、安全性試験に合格した細胞のみを使用しております。
実施している主な試験は以下の通りです。
- 無菌試験(菌が存在しないことを確認)
- マイコプラズマ否定試験(マイコプラズマが存在しないことを確認)
- エンドトキシン試験(毒素が存在しないことを確認)
- 細胞生存率試験(規格値内であることを確認)
- 形態確認(細胞に異常がないか確認)
- 目視試験(顕微鏡下で細菌・真菌・異物の有無を確認)
さらに投与前には細胞の洗浄およびクリーニングを行い、異物混入や培養液残留によるリスクを最小限に抑えています。
※用語説明
エンドトキシン
- 一部の細菌が持つ毒素で、体内に入ると発熱などの反応を引き起こすことがあります。再生医療では混入を防ぐため厳格な検査が行われます。
マイコプラズマ
- 全身状態を持続的にモニタリングし、点滴速度を段階的に調整しながら安全性に十分配慮して慎重に臨床経過を患者様の状態を慎重に観察いたします。
細胞壁を持たない微生物で、細胞培養の品質に影響を与える可能性があります。当院では必ず検査を実施しています。
当院では厚生労働省へ届け出た再生医療等提供計画に基づき、医学的適応が認められる症例に限定して治療を実施しています。
治療前には血液検査等による医学的評価を行い、患者様の健康状態やリスクを慎重に評価したうえで投与の可否を判断しております。
3. 投与管理および急変時対応
幹細胞投与は必ず提供計画登録医師の管理下で実施し、投与中は全身状態を持続的にモニタリングし、点滴速度を段階的に調整しながら安全性に十分配慮して慎重に臨床経過を観察いたします。
また急変時に備え、
- 応急処置に必要な薬剤・医療機器の常時準備
- 救急蘇生に対応できる医師体制
- 近隣高次医療機関との連携
を整備し、迅速な対応が可能な体制を確保しています。
4. 透明性と報告体制
万一不測の事象が発生した場合には、特定認定再生医療等委員会および厚生労働省へ速やかに報告する体制を整えています。
5.今後の取り組み
再生医療は大きな可能性を持つ医療分野である一方、その発展には科学的根拠、安全性、透明性の確保が不可欠です。
当院では今回の一連の報道を真摯に受け止め、これまでの安全管理体制を改めて検証するとともに、患者様の安全を最優先とした医療提供に一層努めてまいります。
今後も当院は、診療から細胞培養、品質管理、投与、アフターフォローまで責任をもって行う一貫体制のもと、医学的根拠と透明性に基づいた再生医療を実践してまいります。
以上
